その頃からいつとなく感得したものとみえて、仔細あって、あの白痴(ばか)に身を任せて山に籠ってからは神変不思議、年を経るに従うて神通自在じゃ。はじめは体を押つけたのが、足ばかりとなり、手さきとなり、果は間を隔てていても、道を迷うた旅人は嬢様が思うままはッという呼吸で変ずるわ。 と親仁(おやじ)がその時物語って、ご坊は、孤家(ひとつや)の周囲(ぐるり)で、猿を見たろう、蟇(ひき)を見たろう、蝙蝠を見たであろう、兎も蛇も皆嬢様に谷川の水を浴びせられて畜生にされたる輩! あわれあの時あの婦人(おんな)が、蟇に絡(まつわ)られたのも、猿に抱かれたのも、蝙蝠に吸われたのも、夜中に魑魅魍魎に魘(おそ)われたのも、思い出して、私はひしひしと胸に当った。 泉鏡花『高野聖』 館。 館は時に異界である。 あまりに広壮、あまりに高雅なる屋敷は、長い時を経て一つの宇宙を形づくる。たとえば、アッシャー家*1。たとえば
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