こんにちは。本日は、伊藤計劃氏の「ハーモニー」の感想です。 数少ない伊藤計劃の長編のひとつです。「屍者の帝国」を彼の長編にカウントしなければ、「ハーモニー」が最後の長編作品ということになります。彼独自の世界観により設定された近未来を舞台に、人間が人間として存在する意味や価値にまで踏み込んだ作品です。彼が作り出す近未来は、必ずしもSF的空想世界ではありません。現実的に、将来起こり得る世界ではないのか。そう思わせるほどにリアリティがあり、有り得ない話ではないように感じさせます。 「虐殺器官」もそうですが、現在の世界の情勢を土台に想定しうる未来を作り出す。想定し得る世界なので、決して目新しい斬新的な世界感ではないのかもしれない。でも、彼が作り出す世界は確かに伊藤計劃の世界であり、誰にも真似できない世界感に感じます。 「ハーモニー」では、彼独自の世界観を表現する方法としてマークアップ言語を文章に取
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