はじめに 私たちは一見安定した存在に見えますが、実は約2ヶ月で体のほとんどの部品は新しいものと入れ替わっています。これは生物に秘められたリサイクル活動です。またときには環境の変化に応じて体の一部をより積極的に分解することもとても重要な作業です。つまり「日常的な地道な分解」と「激しく誘導される分解」を巧みに使い分けています。私たちはこのどちらにも関与する「オートファジー(自食作用)」と呼ばれる細胞内の大規模な分解系を対象にして、生命体が健康状態を保ち、時には大胆に変化できる秘密を研究しています。 タンパク質とは 生命の最小単位は細胞です。例えば大腸菌のような単細胞生物はひとつの細胞で生物として活動しています。一方、ヒトは約60兆個の細胞から出来ています(図1)。さらに細かくみると、細胞の中、あるいは細胞と細胞の間は様々な生体分子(タンパク質、脂質、糖質、核酸など)で構成されています(図1)。