村上天皇男八の宮・永平親王。容姿は可愛らしかったが、暗愚であった。叔父の藤原済時(なりとき)のもとで育てられる。 まだ幼い(七、八歳)のに、済時の娘に恋心を抱き、執拗につきまとうので、不快に思った済時が、娘と会わせないようにしたこともあった。 また、済時の長男と、甥の藤原実方とが、無理やり親王を馬に乗せ、顔を真っ赤にして馬の背中にしがみつくばかりの親王を笑いものにしたこともあった。騒ぎに気づいた済時が、親王を馬からお下ろしするように言うと、親王は馬の背中にしがみつきながら、たてがみを咥えていたので、その場にいた女房たちも大笑いするが、済時は情けない思いであった。 さて、冷泉帝の后・昌子内親王は、お子がいらっしゃらなかったので、この永平親王を御養子になさって、ご自分のもとに通わせたいとお考えになっていた。そのことを知った済時は、大変結構なことと考え、吉日を選んで、親王に立派な衣装を着せて、后
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