歴史の表舞台で活躍した貴族の裏には、太政官の実務部門である「官底」に詰めて、資料を黙々と作る実務官人たちの姿があった――。深夜に寒くて暗い外記局の官底で、膨大な書物を検索していた下級官人は、一体何を思っていたのか? 「平和で優雅な時代」の苛酷な日常を描き出した最新刊『平安京の下級官人』の著者・倉本一宏氏が、特別に書き下ろしたオリジナルエッセイを公開します! 古記録だけに基づいた叙述 永年の念願であった『平安京の下級官人』という本を、やっと書き上げた。平安京に生きた「下衆(げす)(下司)」と呼ばれた下級官人や、さらにその下部で下級官人に従属している階層の人びと、さらには「下人(げにん)」と呼ばれた庶民について、貴族や皇族、天皇によって記された古記録(こきろく)だけを使って、その真の姿を明らかにしたいと、随分前から願っていたのである。 今回、9世紀末の『宇多天皇御記(うだてんのうぎょき)』から
![深夜に文書の検索を命じられ……歴史の裏に隠れた実務官人の生活(倉本 一宏)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/e1cad4e5837a5a50bbc2d2f1f981361c574b52a6/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Ff%2F7%2F1200m%2Fimg_f76bb2ad79bf5317d656033f9628c1b6115509.jpg)