→紀伊國屋書店で購入 文学全集は長らく出版社のドル箱だった。最初の文学全集は大正15年(昭和元年)に改造社が出した『現代日本文学全集』だったが、36万部という大成功をおさめた。以後、文学全集は出版社を潤しつづけたが、高度経済成長時代が終わると急に売れなくなり、昭和天皇の崩御した年に刊行のはじまった『集英社ギャラリー・世界の文学』が最後の文学全集となった。どうも文学全集は昭和という時代の産物だったらしい。 本書は過去の遺物となった文学全集をヴァーチャルに作ってみようという鼎談である。半分は遊びだが、半分は大真面目のようだ。というのも、文学全集に収録する作品を選ぶことは、文学のカノン(正典)を定めることだからだ。文学全集の編集はすぐれて批評的な行為なのである。 ヴァーチャル編集委員会の委員は丸谷才一、鹿島茂、三浦雅士の三氏で、顔ぶれから予想されるように、従来の文学全集を支配していた19世紀文学