『通信３－４ だから「つけ」は払ったって言ってるでしょう』まだ紅葉と言うには浅い燃え方の山肌をまだ夕陽と言うには若々しいその太陽の光が緩やかに伝い流れ落ちてくる。刻々と形を変え色を変えながら下りて行くその光が地面に達したときどうなるのだろうかと必死で目を凝らすのだが私の壊れかけた目のせいかあるいは元々それは見る事が出来ないものなのかどうしてもその光の行方を追う事が出来ない。私は私の最も近しい友人であり、時に父親代わりとも言えそうな江口利哉君の運転する車の助手席に蹲り、現われてはまた流れて行く風景をじっと見つめる。 昨日は、江口君に我儘を言って、青藍山にある隠居部屋に連れて行ってもらった。先日、一人で行った山の上にある仕事部屋ではなく、療養の為にうつうつと一年をそこで過ごした、ぼろぼろのアンクルトムの部屋とでも呼びたくなるようなその部屋に、ストーブだとか上着だとか冬をぬくぬくと過ごす為の七つ道具、自分を腑抜けにしてしまうとランボーを恐れさせた冬に役
