戦略研究では戦略の適否を判定する基準として九つの「戦いの原則」が明確化されていますが、外交研究においては外交の適否を判定するためにどのような基準が考察されているのでしょうか。 今回は、政治学者ハンス・モーゲンソーによって考察される外交の基本的原則について紹介したいと思います。モーゲンソーは平和を維持するために決して軽視してはならない四つの原則を挙げて説明しています。 (1)外交は十字軍的精神から脱却しなければならない。 第一の原則としてモーゲンソーは「外交は十字軍的精神から脱却しなければならない」という原則を示し、抽象的な教義やイデオロギーが優れた国政術、政治の実践を妨げる危険性を指摘しています(モーゲンソー1998: 567)。 特にモーゲンソーが懸念していたのは政治の問題を政治道徳や善悪の問題にすり替えてしまうことで、自らの正義を確信し、周囲の不正に対する無分別な反感を引き起こし、果て