vol.10 実験中のふるさと「浦安」 写真・大森克己 一時期疎遠になった高円寺に最近またよく行くようになった。 今日も自転車で出かけた。まだちょっと早い気がするけれど、路地を一つ入ると蚊取線香の匂いがしてきた。この辺は閉架が多いから蚊が多いと聞いたことがある。平日の昼間、ゆったりした、というより少しダラっとした雰囲気。 東京に出て僕が最初に懐いた町は高円寺だった。 わずかなお金でおしゃれにしたくて古着屋に行きだしたのがきっかけだった。飲み屋がいっぱいあって、昼間から人が暇そうにしてる。緩やかな坂道と商店街。お寺。古本屋。僕の欲しかった東京の風景があった。今も当時もその感じは変わらない。駅前が綺麗になったりしたけれど。この町はいつ行ってもおんなじ匂いのおばあちゃんちみたいなところがある。 大森さんは「浦安は実験中の町だよね」と言った。僕はちょっとハッとした。言われてみれば確かにそうだけれど