これでいいのか? 朝ドラ『エール』の、10月12日から16日の回が、「戦争を真正面から描いた」として評判がいい。 「戦場」シーンを出して、その残酷さと非情さ、理不尽さ、虚しさといったものをストレートに描き、号泣しない演技、音楽も排した抑制された演出も称賛に値するだろう。 これまでの朝ドラは主人公の大半が女性だったので、実在の人物をモデルにした一代記ものでも、「戦争」を描くとしても、間接的だった。 ヒロインの夫や恋人、あるいは息子が戦死する、本人も空襲で家が焼けるといった悲劇はあっても、戦争は背景としてあるだけだった。その戦争を背景とした物語において、ヒロインは戦争の被害者にすぎなかった。 だが『エール』では、主人公が男性であり、戦争に積極的に加担した加害者側の人物がモデルなので、戦争を避けて通れない。その物語が要請する「戦争」をしっかりと描いた。 『エール』が純粋なフィクションで、窪田正孝