「kanon(κανων, canon)」とは、追復曲。複数の声が、同じ旋律を異なる時点から、各自開始して演奏する様式。異なる音、異なる旋律を持ちながら、最後は一つへ調和する。描きたかったのは、そんな“愛”という一つの結末へ向かって、奇跡へ収束していく五つの物語。・・・恋をすることで、“幸せ”な風は辿り着く。 恋をすることで、“幸せ”な風は辿り着く。 Key作品は、恐らく1999-2000期の既存メーカーでは、最も“売れること”に拘った作品だろう。「Kanon(1999)」「Air(2000)」は、物語を意図的に欠損させ、結末を殆ど語らないスタイルを貫く。物語が“完成すること”が最も評価されるはずの業界において、“あえて語らない”というのは、随分と挑戦的な手法であり、さらに、この作品は、エロゲーで本来描かれるべき“恋愛”の生臭さを“奇跡”というキーワードで覆い隠してしまった。この二つの物語