表面的に相手を尊重しているかのようにコミュニケーションを取れば、とりあえずは角を立てられることのない社会である。「腹を割って話す」という行為自体が忌避される以上、相手の内面がどのようになっているかは互いに分からない。 皆、ブラックボックスの外からレーザを照射して中を予測することで相手を測る。「中身を見せて」という主張は気持ち悪がられ、排される。それがある時期に「ルール」として定着したようだ。中年以上の人々が「腹を割って話そう」と嬉々として主張するのを見ていると、この「ルール」は最近のものだと考えられる。私が生まれる前か、物心がつく前ではないか。私は腹を割って良いケースを社会に見出したことがない。期待したことなら何回もあるが…… 人間関係において熟達している人は、相手からのレーザを自分のブラックボックス内でどう反射するかを決める能力を持つ。一方、相手の反射能力を無効化する強力なレーザ照射装置