映画『HERO』で主演を務める木村拓哉。誰もが認めるスターである彼だが、「俳優・木村拓哉」に向けて、大衆はある言説を放ち続けている――「キムタクはなにをやってもキムタク」。わたしたちは「木村拓哉」のなにを知り、なにを知らないのか。全3回の考察で迫る。 木村拓哉は今日も最前線にいる。 それは、たとえば、最新主演作公開を前にして、「木村拓哉」をお題とした論考の依頼がなされ、いまこうして書かれようとしていることからも明らかだろう。 ある種の現象として語ることのできる存在が、いまの日本に何人いるのだろう。この現象は、少なく見積もっても初めての主演ドラマ「ロングバケーション」(1996)から20年にわたって続いている。 世が世なら、勝新太郎や市川雷蔵、そして石原裕次郎(この3人は同時代人である。勝新と雷蔵は同い年のライバルであり、勝新は3歳年下の裕次郎と親友だった)らに連なる、日本の芸能を象徴するな