→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ほどけゆく個人のゆくえ」 本書は、作家の平野啓一郎が、2009年の小説『ドーン』の作中で描いた概念「分人主義」について、スピンオフ的に別の著作にまとめあげたものである。 『ドーン』は近未来の社会を描いた小説であり、「分人主義」という概念も、われわれ人間存在のこれからのゆくえを説得的に描き出したものとして興味深く、何よりもネーミングセンスがよい。 その内容についてパラフレーズしておくならば、「分人主義」とは読んで字のごとく「個人主義」と対置される概念である。元の英語で述べたほうが分かりやすいが、「個人」がin-dividual(それ以上分けられない存在)であるならば、「分人」とは、dividual(分けられる存在、複数のコミュニケーションの寄せ集まった存在)のことをいう。 すなわち、人間存在を、「固定化された自己」や「かけがえのない自分」が中心に据えられたもの