(IDWR 2005年第19号) カンピロバクター属菌は2004年現在、17菌種6亜種3生物型から構成されている。ヒトのカンピロバクター感染症は胃腸炎症状を主たる臨床像とし,その原因菌の95〜99 % はCampylobacter jejuni subsp. jejuni(以下C. jejuni )で、C. coli は数%に止まる。また、敗血症や髄膜炎、膿瘍などの検査材料から分離されるカンピロバクターはC. fetus subsp. fetus であることが多い。カンピロバクター感染症はC. jejuni 腸炎、またはC. jejuni 食中毒とほぼ同義語と考えてよく、ここではその周辺に焦点をあてて概説する。 疫 学 C. jejuni はC. coli と共に1982年、食中毒起因菌に指定されて以来、食中毒事例数においてサルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌に次ぐ発生頻度を示している