ブックマーク / ameblo.jp/t-kazuo (20)

  • 『アウシュヴィッツの記憶の多面性』

    今年も1月27日の国際ホロコースト記念日が過ぎた。第2次世界大戦末期の1945年1月27日にポーランドのアウシュヴィッツ=ビルケナウの強制収容所がソ連軍に解放されたのを記念して2005年に国連総会が、この日を国際ホロコースト記念日に指定した。ホロコーストとは、ナチスによるユダヤ人大虐殺を意味している。 ユダヤ人が多いので冗談交じりにジ3ューヨークと語られことのあるニューヨークに留学した筆者は、多くのユダヤ系の人々に出会った。ジューとは英語で「ユダヤの」という意味である。その中にはポーランドから移民してきたユダヤ人もいた。そうした人々によれば、ポーランド人はナチスのユダヤ人迫害に加担した人々であった。ポーランドを占領したナチスと占領されたポーランド人の間で意見が合ったのは、ユダヤ人に対する嫌悪であった。 ここでいうポーランド人とは、ユダヤ系の人々を除いている。つまりカトリック教徒である。ナチ

    『アウシュヴィッツの記憶の多面性』
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    naryk 2021/03/08
  • 『アラブ諸国の民衆は反発』

    アラブ諸国は表向き、「パレスチナの大義」や「アラブの統一」、「イスラエルによるパレスチナ占領への反対」という建前を掲げてきたが、現実にはイスラエルと交流している。最近は、サウジアラビア要人のイスラエル極秘訪問が伝えられたり、イスラエルでの自転車レースにアラブ首長国連邦(UAE)の選手団が参加したりするなど、建前もおぼつかない。国家として米大使館エルサレム移転に気で反対するアラブ諸国はほとんどないと言えるくらいだ。 サウジはイスラム教の聖地であるメッカやメディナを抱え、イスラムの守護者という立場だ。ヨルダン王家は預言者ムハンマドの血を引く家系だと主張している。そんな両国がイスラム教第三の聖地エルサレムを守れず、大使館を移した米国に抗議するどころか、米国から支援を受けて何とか生き延びている―。その事実はイスラム的な正統性を大きく傷つける。 国家と民衆レベルではイスラエルに対する感情が異なる面

    『アラブ諸国の民衆は反発』
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    naryk 2018/05/22
  • 『IS掃討後も混沌続く中東』

    中東での「IS(イスラム国)」の軍事的な後退が続いている。 7月上旬、ISが支配していたイラク第2の都市モスルが、イラク政府軍などによって3年ぶりに解放された。シリアでもISは追い詰められつつある。ISが首都と称するラッカには、同じく7月上旬にクルド人を主体とする部隊が突入した。陥落は時間の問題とみられている。イラクでもシリアでもIS後の風景が視野に入ってきた。 だが、IS掃討が実現しても、混乱が収拾する気配はない。イラクの今後には、三つの難題が待ち受ける。第一に北部のクルド人の支配地域と中央政府の支配地域の線引きの問題である。第二にイスラム教スンニー派の取り扱いである。第三にクルド人の分離独立傾向である。 IS敗退後に再燃するイラク北部での対立 イラクでのISの敗退は明らかだ。勝者はもちろんイラク中央政府だ。しかし、それだけではない。北部からISを攻撃したクルド人の力も無視できない。現在

    『IS掃討後も混沌続く中東』
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    naryk 2017/09/25
  • テロ対策とテロ〝後〟対策(1) | 高橋和夫の国際政治ブログ

    海外でテロがあるたびに、日でもテロがあるだろうかと質問される。そしてテロ対策に関しても聞かれる。 忘れてはならないのは、日という国では1995年にサリンが地下鉄でまかれるという事件が起きているということである。こんな国は、世界に日以外にはない。さかのぼると1974年には三菱重工社が爆破され、多数の死傷者がでている。現実は、日人の自己認識とは異なる。必ずしも日が安全な国とは言い切れない。 すでに日でもテロが起こったという現実を踏まえると、テロを未然に防ぐ対策も重要だが、テロが起こった際に、その被害を最小限に抑える準備も必要ではないだろうか。たとえば13年にアメリカのマサチューセッツ州で行われたボストンマラソンの際に起きたテロでは、兄弟のテロリストが2回の爆破事件で260人以上を負傷者させた。だが、死者は3人にとどまった。病院に搬送された負傷者で、その後に死亡した者はいなかった。

    テロ対策とテロ〝後〟対策(1) | 高橋和夫の国際政治ブログ
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    naryk 2017/08/05
  • 『イスラエル市民のアラブ人(2)』

    現代のヘブライ語というのは不思議な言語である。長い間、宗教儀式の際に使う言語として保持されてきた。そして、じっさいの生活においてユダヤ人は、生活をしている地域の言語を使ってきた。イギリスに住んでいれば英語を、フランスに生活していればフランス語を使ってきたわけだ。 ところがシオニズム運動が高まると、ヘブライ語をじっさいの生活言語として復活させようという運動が始まり、古代の言語が20世紀に入って日常的に使われるようになった。たとえていえば、カトリック教会が、儀式の際にのみ使われているラテン語を復活させて日常に使うようにしたようなものだ。考えて見れば凄い話である。 いずれにしろ、中東諸国からイスラエルに移住した人々にとっては、アラビア語が生活言語であって、ヘブライ語は第二言語であった。アラビア語を家庭内で話し、ヘブライ語は外で使うよそ行きの言語であった。アラビア語が公用語のハズである。イスラエル

    『イスラエル市民のアラブ人(2)』
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    naryk 2017/08/04
  • 『イスラエル市民のアラブ人(1)』

    イスラエルでは、思いのほかアラビア語が通用している。事実、この国ではヘブライ語とアラビア語の両方が公用語である。 イスラエル成立時に多くのパレスチナ人、つまりアラブ人が故郷を追われた。今日もつづくパレスチナ難民問題の原点である。しかし、故郷にとどまったパレスチナ人もいた。現在、その子孫も含めイスラエル国民の2割以上がアラブ人である。実数にすると200万人以上になる。ちなみにユダヤ人口は650万人ほどである。イスラエルのアラブ系市民はバイリンガルだ。二言語生活者である。ヘブライ語も話せばアラビア語も操る。 多数派のユダヤ人の多くも、ヘブライ語とアラビア語のバイリンガルである。イスラエルの成立後、多くのユダヤ人がアラブ世界からイスラエルに移住している。イスラエル政府がアラブ諸国のユダヤ人たちに、自分たちの国家への「帰還」を呼びかけたからだ。 また、イスラエル成立時にパレスチナ人がユダヤ人によっ

    『イスラエル市民のアラブ人(1)』
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    naryk 2017/08/04
  • 『アメリカ海兵隊のイランへの「借り」』

    イランとアメリカの関係が気にかかる。というのは、トランプ政権の中枢にいる人々の対イラン認識が必ずしも芳(かんば)しくないからだ。確かに就任前の公聴会ではレックス・ティラソン国務長官もジェームズ・マティス国防長官も2015年にオバマ政権がイランと結んだ包括的な核合意の尊重を主張した。これは、同合意を「史上最悪のディール」であると呼び今にも破り捨てんばかりに批判した大統領選挙候補者のドナルド・トランプとは違う立場であった。そして、確かに同合意を現段階ではアメリカは遵守している。 だがトランプ政権の中枢にいる軍人たちの対イラン観が気にかかる。トランプ政権では三人の将軍が安全保障上の要職を占めている。まず国家安全保障問題の補佐官のハーバート・マクマスターがいる。陸軍中将である。次に国土安全保障省の長官のジョン・ケリー将軍がいる。最後に既に紹介したようにジェームズ・マティス将軍が国防長官を務めている

    『アメリカ海兵隊のイランへの「借り」』
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    naryk 2017/08/04
  • 『モスル陥落に関するコメント』

    完全制圧の道険しく ISが主要拠点としてきたモスルの陥落は、イラク情勢が新たな段階に入る転機となる。ISという共通の敵を失った中央政府とクルド人がどう対峙していくのかが懸念事項だ。 クルド自治政府は独立の是非を問う住民投票を9月に行うと表明している。シーア派のアバディ政権がスンニ派の意向をどこまでくんで復興を進めていくかも課題で、不安定な状況は今後も続くだろう。 支配地域を狭めつつあるISは、世界各地でのテロ活動を強めていくと見られる。このまま組織の体がなくなっていけば、過激派組織アルカイダに吸収される可能性もある。対IS作戦の主戦場はシリアに移るが、様々な 勢力が入り乱れる中で完全制圧の道は険しく、中東情勢の先行きは楽観できない。 ※『日経新聞』(2017年7月12日 水曜日)朝刊9面「国際2」欄に掲載した記事です。

    『モスル陥落に関するコメント』
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    naryk 2017/07/15
  • 『米国の関与縮小で深まる中東混乱(1)』

    6月3日、英ロンドンで、イスラム過激派によるものとみられるテロが発生し、少なくとも7人が死亡した。ロンドンでは3月に続く惨事だ。いずれもテロ後にIS(「イスラム国」)が犯行声明を出している。ISの活動拠点は中東のイラクとシリアにまたがる地域である。中東の混乱が世界を恐怖に陥れつつある。 中東でいちばん影響力のある国は、中東の国ではなく米国だ。米国の動きが中東の国際政治を規定する。ブッシュ(子)元大統領時代に米国はアフガニスタンとイラクで戦争を始めた。逆にオバマ政権は、軍事力の行使には消極的であった。 それではトランプ政権は中東でいかに行動するのだろうか。オバマ政権のように慎重になるのだろうか。それともブッシュ政権のような「積極性」を見せるのだろうか。 5月下旬、トランプ米大統領は、就任後初の外遊先として中東を訪問した。米大統領の初外遊先は隣国のカナダやメキシコが通例である。あえてサウジアラ

    『米国の関与縮小で深まる中東混乱(1)』
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    naryk 2017/07/12
  • 『「イスラム国」後の風景』

    過激派組織「イスラム国」(IS)のイラクの拠点モスルが陥落しそうである。そしてシリアにある拠点で「首都」とされているラッカの攻防戦が格化している。ラッカ攻撃の主力はシリアのクルド人の組織YPG(人民防衛部隊)である。米国がYPGに装備と訓練を与えている。そして、攻撃を米空軍が支援している。クルド人が一番ラッカに近い位置に部隊を持っているという地理的な理由が、この支援の背景にある。 クルド人は、総人口が3千万人を超える民族である。しかしながらイラン、イラク、シリア、トルコなどにまたがって生活しており、いまだ独立という長年の夢を果たしていない。 そのクルド人に対する米国の支援はトルコの強い反発を招いている。トルコの人口の4分の1程度と推測されるクルド人は1970年代以来、分離独立を目指して断続的に武装闘争を行ってきた。その組織はPKK(クルド労働者党)として知られる。シリアのYPGとトルコの

    『「イスラム国」後の風景』
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    naryk 2017/07/10
  • 『モスル後の中東』

    モスルの陥落以降の情勢を質疑風にしたためてみました。 Q:モスルで追い詰められる「イスラム国」ですがモスル陥落ということになれば、イラク国内での勢いはなくなると見ていいのでしょうか? はい、その勢いは大幅に低下すると思われます。 Q:モスル陥落なら、イラク政府は、今後、どういう動きをするのでしょうか? どう動くかは読めませんが、どう動くべきかはわかります。 スンニー派の人々を、どうやってイラクの政治システムに取り込むか。疎外されたままでは、スンニー派地域での新たな抵抗運動が起きるでしょう。 この地域の復興にも力を注ぐ必要があります。 Q:シリア内のイスラム国はどうでしょうか? やはり、こちらも弱体化していますか? 「首都」ラッカ陥落も近いとの報道も出ていますが…。 恐らく時間の問題でしょう。 Q:最近、フィリピンのイスラム国の情勢がよく伝えられますが、東南アジアで、同じように、イスラム国の

    『モスル後の中東』
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    naryk 2017/07/03
  • 『地政学から考えるシリア』

    シリア問題はシリアだけを見ていては語れない。そこで起きている現象は、単なる内戦ではない。 イラン、イスラエル、トルコなどの周辺諸国の介入があるからだ。またロシアと欧米という地域外の大国の関与がある。となるとシリア国内情勢に加えて、地域政治、そして国際政治という3つのレベルからの多層的な分析でなければ、錯綜する状況に太刀打ちできない。 こうした状況を一変させかねない変化がアメリカで起きた。いうまでもなくトランプ大統領の誕生である。この大統領の誕生とタイミングを合わせたように出版された書籍に依拠しながら、シリアをめぐる地政学を考えてみたい。 勧善懲悪ではない まずシリアに正面から取り組んだのが、青山弘之東京外国語大学教授の最新作『シリア情勢』(岩波新書・2017年)である。書によれば、シリア情勢はアサド大統領が悪人で反体制派が善人という単純な勧善懲悪の物語ではない。しかも世界が期待を寄せてき

    『地政学から考えるシリア』
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    naryk 2017/05/18
  • 『ロシア・トルコ関係とクルド問題』

    シリアの見取り図 最近の中東情勢を見るポイントの一つはトルコとロシアの接近である。そしてロシアとトルコの関係を見るポイントはクルド問題である。 2016年に入ってロシアとトルコが仲介した停戦がシリアで発効した。完全に銃声が消えたわけではないが、少なくともシリア政府つまりアサド大統領の軍隊と反体制派の間では停戦が保たれているようだ。この停戦は、昨年末シリアのアレッポの攻防戦が終わった結果を受けて出てきた。その結果とは、どのようなものだったのだろうか。それは、アサド政権軍と支援するロシアやイランなどの諸勢力の勝利であった。敗れたのは反体制派と呼ばれる勢力である。 大まかに言うと、シリアは、アサド政権の支配地域と、その他に分かれる。その他は二つに分かれる。アサド政権に反対する勢力の支配地域とクルド人の支配地域である。クルド人は、アサド政権寄りでもなければ、反アサド勢力寄りでもない。クルド人はクル

    『ロシア・トルコ関係とクルド問題』
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    naryk 2017/05/01
  • 『メイ英首相が解散総選挙を表明! 国民の信を問う理由とは』

    ※2017年4月19日(水)午前放送の東京FMの番組「クロノス」 での発言要旨です。 ----------------- 中西哲生と高橋万里恵がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「クロノス」。 4月19日(水)放送の「WAKE UP NEWS」コーナーでは、総選挙実施の意向を表明したイギリスのメイ首相について、放送大学教授で国際政治学者の高橋和夫さんに話を伺いました。 メイ首相は18日、下院を解散し6月8日に総選挙を実施する意向を表明。その理由について「欧州連合(EU)からの離脱を決めてから、政府は離脱に向けた正しい計画を取りまとめた。しかし野党側は反対し、政治ゲームのように扱っている」と述べ「苦渋の決断だがEU離脱へ導く強く安定した指導者が必要だ」と説明しました。 この決断について、高橋さんは「世論調査を見るとメイ首相率いる保守党が、野党である労働党を圧倒的に引き離していま

    『メイ英首相が解散総選挙を表明! 国民の信を問う理由とは』
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    naryk 2017/04/20
  • 『トルコ改憲 僅差の承認 EU加盟さらに遠く』

    ▽賛成が51%にとどまったのはエルドアン大統領にとって予想外の苦戦といえる。かつて市長を務めたイスタンブールで反対票の方が多かったのが象徴的だ。 ▽正統性に疑念がつく形で大統領権限が強まるが、早くも死刑制度復活に言及したように、二分した国民をまとめる雰囲気は乏しい。大統領が強権姿勢を緩めそうになく、トルコ社会の分断は中長期で深まるだろう。 ▽今回の結果を受け(強権統治に反発する)欧州連合(EU)との関係が厳しくなることは避けられない。EU加盟はさらに遠のいたといえる。ただエルドアン氏が外交面で従来と姿勢を大きく変えるとは考えにくく、中東情勢への影響は特段ないとみている。 ※2017年4月18日(火)の日経済新聞朝刊に掲載されたものです。

    『トルコ改憲 僅差の承認 EU加盟さらに遠く』
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    naryk 2017/04/19
  • 『スルタン再来か トルコ岐路』

    トルコの憲法改正に関する国民投票が日行われる。トルコとの時差が6時間なので、日時間では日の午後に投票が始まる。投票数の過半数が賛成であれば、この憲法改正が認められ、大統領の権限が大幅に強化される。議院内閣制により象徴的な現在の大統領ポストが、米国のように強い権力を持つ実質的な存在に変わるのだ。 具体的には首相職が廃止される。そして大統領には閣僚や最高裁の裁判官を任命したり、大統領令を発したりする権限が与えられる。大統領の任期は2期10年まで。仮に憲法が改正されると、その憲法下での大統領選挙は2019年に行われることになり、今のエルドアン氏は29年まで在任するだろう。つまり、欧州と中東にまたがる国に、途方もなく強い権力を持った大統領が生まれる。米国型の大統領というよりも、ロシアのプーチン氏に近い存在にエルドアン氏はなるだろう。 ■人気の大統領 改正への賛否に関する世論調査の数値は拮抗し

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    naryk 2017/04/16
  • 『アメリカのシリア攻撃に関するコメント』

    米軍による今回の攻撃をシリアのアサド政権は予想していなかったのではないか。 化学兵器を誰が使ったのかは確定していないが、状況証拠から見ればアサド政権である可能性が高い。では、なぜ、アサド政権はこのタイミングで化学兵器を使ったのか。数日前にトランプ政権がアサド政権の退陣を求めない姿勢を示したことが影響していると考えられる。「今なら何をやっても叱られないはずだ」。そう考えたアサド政権が、自軍の犠牲を最小限にとどめ、反体制派を抑えられる方法を選んだ可能性がある。 巡航ミサイル59発という米軍の攻撃の規模は、03年からのイラク戦争で米国がフセイン政権転覆を目指して実施した初期の攻撃に比べれば小さい。懲罰的な攻撃にとどまっており、アサド政権の受け止めは「ちょっと怒られた」という印象だろう。 今回の攻撃だけで終われば、シリア内戦の構図や米露関係が大きく変わることはないと考える。現在、シリア国内ではアサ

    『アメリカのシリア攻撃に関するコメント』
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    naryk 2017/04/11
  • 『3度目の悲劇~クルド人と化学兵器~(2)』

    1980年代、このイギリスの戦術をサダム・フセインがまねることになる。1980~88年にたたかわれたイラン・イラク戦争で、イラク軍は大量に、頻繁かつ公然と化学兵器をイランの軍隊と民間人に対して使用した。そればかりか、自国内のクルド人に対しても化学兵器を使った。これがイラクで化学兵器が使われた2回目の例であった。 そして今回の悲劇である。モスルに追い詰められたISが最後の抵抗として化学兵器を今後とも使ってくるだろうと予想される。そうするとモスルの攻略に参加しているクルド人の部隊が、その被害者となるだろう。 モスル以降の戦闘を展望すると、次の焦点はISのシリア国内の拠点・ラッカとなるだろう。しばしばISの首都として言及されてきた都市である。IS側には最後の砦となるので、徹底した抵抗が想定される。 では、ラッカの攻略にはだれが参加するのか。IS以降のシリアに影響力を行使したいトルコがラッカ進出へ

    『3度目の悲劇~クルド人と化学兵器~(2)』
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    naryk 2017/04/08
  • 『3度目の悲劇~クルド人と化学兵器~(1)』

    イラク北部で化学兵器が使われたとの報道がつづいている。使っているのはIS(「イスラム国」)である。昨年の10月からのイラク北部の最大都市モスルの攻防戦が最終段階に入ったようだ。 この人口200万人の都市は、2014年夏以来、ISの支配下にあった。しかしながら昨秋からのイラク政府軍や北部のクルド人の部隊などが激しく攻め立ててきた。まずモスルの東半分をISは失った。現在は西半分をめぐる戦闘が行われている。この戦闘の当初からISが化学兵器を使っているとの散発的な報道があったが、その頻度が高くなってきた。ISには多くの元イラク軍将兵が参加している。その中にサダム・フセイン時代に化学兵器を担当していた者も多いようだ。 モスルは石油産業の中心である。化学兵器の製造に必要な原料は石油から製造される。したがって、その調達は容易である。使われているのはマスタード・ガスと呼ばれる兵器のようだ。 マスタード・ガ

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    naryk 2017/04/07
  • 『ラッカ攻防後が重要』

    ※3月17日(金)に「しんぶん赤旗」7面に掲載されたものです。 ---------- 丸6年を経過したシリア紛争と、それをめぐる国際政治について、中東と米国政治に詳しい放送大学の高橋和夫教授に聞きました。(小玉純一) シリアのアサド政権は、アラウィ派というイスラム教のなかで少数派が担っています。権力を手放すと反体制派に皆殺しにされる恐怖心があり、反体制派を攻撃してきました。 アサド政権にはロシアとイランが、反体制派には米国、トルコ、サウジアラビアなどがつきました。アサド政権は一時、倒されそうにもなりましたが、ロシアが激しい空爆で反体制派を攻撃し、米国はアサド政権を直接攻撃しませんでした。そのため、いわゆる穏健な反体制派が負けて、アサド政権が生き残りました。ほかに残っているのは、クルド人勢力、過激組織ISや他の過激勢力です。ISは政権派と反体制の内戦の混乱に乗じて支配地を広げました。 どの勢

    『ラッカ攻防後が重要』
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    naryk 2017/03/24
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