兵庫県尼崎市の特別養護老人ホームに1台の公衆電話がある。施設は電話会社から幾度も廃止を要請されながらも抵抗し、近隣の人々もテレホンカードをかき集めて存続を支える。一人一人の脳裏には、27年前の阪神・淡路大震災が焼き付いている。将来起こりうる巨大地震を見据え、施設運営者は力を込めた。「公衆電話は災害時に優先的にかかる。そのありがたみを伝えていきたい」(竹本拓也) 【写真】使用済みテレホンカードを再利用した小物入れ この地域に公衆電話は何台あるでしょう-。 昨年11月下旬。市内であった防災訓練の終わりに、施設運営者の男性は参加者たちにこう尋ねた。 施設は、尼崎市小中島1の特別養護老人ホーム「園田苑」。人口約3700人もいる「小中島地区」にあるその数とは-。 答えは5台。そのうち1台は園田苑にあるものだ。 施設を運営する「阪神共同福祉会」理事長の中村大蔵さん(76)が強調する。 「施設には24時