5年前の東日本大震災で学区が被災したことをきっかけに入学する児童の数が激減し、2015年度末で閉校となった宮城県石巻市立門脇小学校で、当時の鈴木洋子校長が朝礼で子どもたちに贈った言葉がある。「桃花笑春風」。この言葉を贈られた最後の学年、当時の1年生たちは、来週小学校を卒業する。私自身、発災から3週間後に鈴木元校長に取材し、人々が去った後も春は巡ってくるという意味のその言葉を、かみしめながら石巻での取材を続けてきた。その後上梓した書籍『ふたたび、ここから 東日本大震災石巻の人たちの50日間』(池上正樹著、ポプラ社)より、筆者が執筆協力した内容の一部を抜粋して掲載する。 ◇◇◇ 卒業生たちの名前が順番に呼びだされ、ひとりひとり「はい!」と答える大きな声が聞こえる。 4月15日、石巻市立門脇中学校3階にある満員の小さな視聴覚室。保護者や教職員、数多くのメディアが見守る中、門脇小学校の卒業式が行わ