メジャーリーガー・イチローは、二つの人格を持つと言って過言でない程に、オンとオフをはっきりと切り替える。家族や友人に囲まれた普段の「鈴木一朗」は、笑い声を絶やさない気さくな青年だ。だがユニフォームを着た「イチロー」は、全身に緊張感が漂い、容易に他人を寄せ付けない。シーズン中、イチローは試合前の準備、練習メニュー、試合中の身体の動かし方に至るまで、厳密に同じであることにこだわる。決められた所作をこなしていくことで、次第にスイッチが入っていくのだ。そしてバッターボックスに立った時、イチローの集中力は極限まで研ぎ澄まされる。 首位打者2回、7年連続200本安打、シーズン262安打のメジャーリーグ記録樹立・・・。数々の輝かしい記録はイチローをイチローたらしめてきた一つの流儀から生まれた。 「過去の自分のバッティングを振り返ると、よくあれで打てたなって、今もそう思うんです。これは終わりがないんです