『希望格差社会』(筑摩書房)の著者・山田昌弘氏は、現代日本社会がつきつける格差のどさくさにまぎれて、ムチャクチャなことを言っています。センセ仲間のなあなあ書評や大手マスコミの迎合コメントが言ってることはまったく的が外れています。ほんとうは攻撃的な悪意と低俗な偏見に満ちたスキャンダラスなトンデモ本です。 “「負け組」の絶望感が日本を引き裂く”(表紙)となんだか穏やかでない恫喝の調子で始まるこの本で、山田氏はいったい何を言いたいのか。深刻な日本社会の現状を分析して、引き裂かれた社会と人々の生活を少しでも改善する処方箋を提言している、という見せかけにだまされてはいけません。山田氏の専門分野は社会学的まやかし(sociological cheat)です。「ニューエコノミー」がもたらす雇用の不安定化と労働条件の悪化という原理的・構造的問題とその社会的帰結との関係を曖昧化し、心理の問題(希望)にすり替