1982年のフォークランド戦争の際、開戦に反対する閣僚たちに向かって、サッチャー首相はこう言ったという。「この内閣に男は一人しかいないのですか」。戦争はイギリス軍の勝利に終わり、首相の人気は急上昇した。 ≪「1人の男もいなかった」≫ 南大西洋に浮かぶフォークランド諸島は人口約2千、荒天の日が多く風も強くて樹木の育たない不毛な島である。英領に属するが、島の領有権をめぐりイギリスとアルゼンチンの間で長年争いがあり、互いに正当性を主張して譲らなかった(安藤仁介「フォークランド諸島の領有権紛争と国際法」)。そうした中、アルゼンチン軍の突然の攻撃に対してイギリスが遠く機動艦隊を派遣し防衛したのがこの戦争であった。 これに対し、尖閣諸島は長らく領有権争いなど存在しなかった日本固有の領土である。周辺には豊かな漁場があり、イラクに匹敵するともいわれる石油資源が眠る。明治政府は調査を重ね、無主の地であること