科学部デスク 長谷川聖治 収束の見通しが立たない福島第一原子力発電所の事故の背景の一つに、科学者、工学者の問題意識の低さ、想定の甘さがある。 「マグニチュード9の地震は起きない」、「長時間の電源喪失はありえない」。専門家が言えば、つい信じてしまうが、こうした研究者が独善に陥ってしまうのは、分野を超えた連携が少なく、違う見方を取り入れない視野の狭さが背景にあると指摘されている。 吉川弘之・元日本学術会議議長は、5月18日付の本紙「論点」で興味深いエピソードを紹介している。機械工学が専門の吉川さんが、原発で働くメンテナンスロボットを設計・試作し、実際、東芝が実用機を開発した。しかし、発電所の故障を前提とする技術は、「絶対安全」という思想の原発にそぐわないという理由で、使われなかった。「機械工学」は、「原子力工学」に入れなかったという。科学研究の閉鎖性は、社会に深刻な影響を与えかねないとして、「