家から消えた猫を必死になって捜す――。内田百閒は、ふいに家からいなくなった愛猫を捜して、「ノラや、ノラや」と泣きながら探した様子を随筆『ノラや』に綴った。約60年前に書かれた名作で、今も読み継がれているのは、時代を超えて、ペットが失踪した時の心境に共感するからだろう。 室内飼いの長毛種が行方不明に 富山県在住の恵美子さん(仮名)の愛猫ナナ(4歳)は、今年の5月8日、突然いなくなった。ノルウエージャン・フォレストという北欧原産の長毛種だ。家には同居する猫が2匹いたが、仲はよかった。 「いないのに気づいたのが朝5時半。夜明けに家族が玄関から出入りしたので、その時に出たらしいのですが」 完全な室内飼いで、避妊手術済み。怖がりなので、表に出るとは思ってもみなかったという。だからそう遠くには行ってない、と安心していたが、「ナナ、ナナちゃーん」と呼んでも気配がない。そもそも、あまり鳴かない猫だった。1