島根県大田市温泉津町にある日祖(ヒソ)という小さな村に「HÏSOM(ヒソム)」という一棟貸しの宿が、2019年夏にオープンした。日祖は、海と山に囲まれた小さな集落で、いまは11世帯が暮らしている。家々は海岸からつながる道の両脇に並び、その道が山につながっている。HÏSOMは、山に入る道の少し手前にひっそりと佇む古民家である。日祖で暮らしてきた住人たちは、その場所を「なにもない」ところという。しかし、その「なにもない」ところには、エメラルドグリーンのビーチと、深い緑色の木々が生い茂る森がある。その場所に可能性を見出したのが、HÏSOMのオーナー近江雅子さんだ。 「おとなの楽園」になる場所 雅子さんは、日祖から山を一つ越えた場所にある隣町、温泉津(ゆのつ)に暮らす。彼女は、島根県江津市出身。故郷を離れてしばらく東京で暮らしていたが、住職である夫・康忠さんが島根でお寺を継ぐことになったのをきっか