大抵の乙女にとって夜が短いことは周知の事実である。趣味に打ち込むにも、友人と昼間はできないナイショ話に花を咲かせるにも、どんなに長く夜を使おうとしたって最後は睡魔にさらわれてあっという間に日の出だ。 篠房六郎『おやすみシェヘラザード』(やわらかスピリッツ)で描かれるヒロインも、夜を楽しもうと睡魔にあらがう乙女である。 本作の舞台は由緒ある女子校・千夜学園。一年生の二都麻鳥(にと・あさと)は、付属の女子寮に関するとあるうわさを耳にした。いわく、「13号室には魔女が住んでいて、彼女の誘惑に乗ると、あれよあれよという間に失神させられてしまう」というのだ。乙女たちは想像する。それって具体的には何をされるの? もしかして、「怖い話」ではなく「エロい話」なんじゃないの? 部屋にいるのは本当はセクシーなお姉さまで、部屋にやってきた下級生との甘い夜を望んでいるのではないのか……。 今作のヒロインであり語り