トランクを放り出して、ブラとパンツ一丁になって、ルパンみたいにぴょーんとベッドにダイブしようとして、「んっ」と変な声がでた。 先客がいた。いや、あった。 えっ、これ、なんで? ムワムワ蒸し暑い台湾の街の喧騒から逃れて、汗だくになって入ったホテルでのことである。 九州と同じ面積だという台湾の、北部・台北(タイペイ)から出発して南部・高雄(カオシュン)までをドーッとなだれ落ちる滝のように縦断する、8泊9日の取材旅行の最中だった。 この旅、そもそもメンツからして狂っていた。結婚できない三十路ライターの私、結婚できないのんびりメガネ編集者と、結婚できないせっかちゴリラカメラマン、それからイケメンの台湾っ子だった。台湾っ子は、映画のロケ地などをブッキングすることを生業とするコーディネーターの青年である。 私とメガネ、ゴリラ、イケメンの4人でレンタカーを走らせて、1日におよそ300kmを移動していく旅