「お金」をテーマとする最近話題の漫画に「ハイパーインフレーション」(作・住吉九)がある。ウェブ連載で、単行本も出版されている。タイトルは、貨幣が実質的価値を失うほど急加速するインフレのことだ▲架空の設定の物語で、主人公の少年は、体から本物と変わらない紙幣を大量に生み出す特殊な力を持っている。世界を牛耳る帝国に経済戦争を仕掛けようと、敵味方を巻き込んで激しい攻防を展開する▲そんな「打ち出の小づち」のような、特別の能力があると錯覚しているのではないか。政府がまとめた総合経済対策の大盤ぶるまいに、そうした危惧すら抱いてしまう。円安、物価高対策を名目に歳出規模は29兆円超に達した。もともと25兆円規模だったが、与党との調整で一夜で4兆円も増えたのだという▲もちろん政府に「小づち」はなく、財源の大半は赤字国債発行でまかなう。すでに1000兆円を超す発行残高はさらに膨らみ、ツケは次代に回される▲しかも