古都・奈良も、近年は外国人客が急増している。 彼らに人気なのは、東大寺の大仏のほかは、圧倒的に「奈良のシカ」だ。(「奈良のシカ」と書いた場合、奈良県のシカではなく奈良公園周辺に生息するシカのことである。)私の見たところ、外国人観光客は社寺の仏像よりもシカの方を喜んでいる。 今や地方の農山村地域で「シカ」と聞くと、もはや獣害対象でしかない。被害額は獣害全体で1000億円を超える(農水省統計では200億円以上としているが、届け出されない分を含めると5倍以上と言われる)が、その過半がシカではないかと想像できる。なにしろ推定生息数は全国で325万頭である。イノシシの4倍近いのだ。 だから駆除対象になり、ハンター養成が課題とされ、狩り女子に注目が集まったり、その肉をジビエとして売れないか模索したり……と騒がれるのだ。 しかし、「奈良のシカ」の悩みは、ちょっと違う。 ちょうど奈良県が「奈良のシカ」に関