「14個採卵しましたが、凍結に至った数は0です」 その言葉を聞いて、目頭がじわりと温かくなるのを感じた。ゼロ。つまり、あの引き裂かれるような痛みも、日々の忍耐も、次に進む成果には繋がらなかったらしい。ゼロの内訳についての説明は淡々と終わり、その先のお会計で42,820円と表示されたのでそれを支払い、「今月のトータルで高額療養費制度を使えるかな……」と思いながら病院を出た。 今年の夏は嘘みたいに暑い。先週ここに来たときは、採卵後の激痛で歩くこともままならずタクシーで帰ったけれど、この日は出来る限り日陰を探して駅まで歩いた。池袋の繁華街は、夏休みの家族連れで溢れている。「この子たち、ここまで細胞分裂繰り返したなんてすごいな」と考えながらぼんやり歩く。前回は車内で痛む身体を労りつつ、大きな痛みに耐えた自分への誇らしさと、「14個も採卵出来た!」という高揚感があったのだけど。 ── ここ1年弱、ず