医者ってときどき、いらぬことを言う。 「あ~、これは子ども、産めないなあ」 高校一年のときだった。産婦人科医は、わたしの下腹にエコーを当てながら言った。 モニターには、不鮮明なモノクロ画像で、白い何かが映し出されている。 粗い画像で見る子宮の形は、ネス湖で撮影されたネッシーか何かのようにあやふやだった。 「ぜんぜん、子宮が育ってないから……」 はあ、ともなんとも言えず、わたしは診察台の上で下腹を出したまま、それを聞いていた。未成年のうちは、産婦人科医独特の内診はない。エコーのすべりをよくするために塗られたジェルが冷たかった。 子宮が育ってない。子どもが産めない。それで。わたしはつづきを待った。 「とりあえず、薬を飲んで、ホルモンの数値を整えていこう」 オーケー。とりあえず、薬を飲む。 それでその日の主訴であった、「生理がダラダラ続く問題」は解決するのだろう。 でも、それ以後の人生はどうする