(1)カール・ポパーは、知識の成長に寄与するような態度を規範的に推奨する。批判的態度は知識の成長を最も促進する態度であるが、他方で独断的態度も一定の貢献をする。知識を探求する者は、批判的であれ、独断的であれ、知識の成長に貢献する限りにおいて、その探求の「倫理」を満たすことになる。逆に言えば、知識の成長に貢献しない人物は「倫理的」に批判される。 しかし、知識の成長は、ポパーの言うように、大胆な推測と反駁という過程だけでは遂げられないだろう。われわれは、大胆な推測と反駁を実践した人だけから学ぶのではない。それを実践しなかった人からも学ぶのである。知識の成長は、大胆な推測と反駁をする人と、そうでない人の連携プレーによってはじめて可能になるような気がする。では、その連携プレーはどうあるべきなのか。また、大胆な推測と反駁をしない(批判的でない)人とは、どのような人物であるべきか。 (2)社会科学者(