人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える 以前にも紹介したことがある、平野啓一郎の『マチネの終わりに』から抜粋した。ストーリーの序盤でこの言葉とばったり出会ったとき、この本はきっと何度も読み返すだろうと思った。今年の春にはじめて読んで、夏の終わりに再読。次に読むときはまた違った感動があるかもしれない。 過去は変えられない。 変えられるのは未来だけ。 多くの人はそう思っているだろう。 事実、起こった出来事は変えられないのだから。 しかし、事実は事実であっても、その事実に対する意味づけが変われば思い出は変わる。 辛い過去を背負った人が後に幸せを手にしたとき、過去は重要な飛躍のタネになっていることに気づく。 そのとき、自分の中の過去は変わる。 そして、もうひとつの過去の変化。 記憶にあるもの