小さな街灯が照らす駐車場の入り口に、黒いSUVが滑り込む。 周囲は田園地帯。エンジンを切ると、虫の音が聞こえてくる。浦和レッズDF槙野智章は乗用車を降り、真夜中のクラブハウスへ向かった。 5月上旬。3時間前まで、チームはルヴァン杯を戦っていた。 フル出場した槙野は、疲労回復を図るべく、深夜のクラブハウスを交代浴のために訪れていた。 W杯開催に伴う中断期間がある影響で、その前後は過密日程。中3日ペースでの15連戦を強いられている。身体のケアは重要だ。 熱湯に3分つかり、冷水に3分つかる。これを3回繰り返す。 これをやるのとやらないのでは、疲労回復のスピードに格段の差がある。 「本当なら、もっと早い時刻に交代浴できるんですけどね。今回はドーピングチェックに当たってしまったので」 試合後、両チーム2人ずつが指名され、尿検査を受ける。その中でただ1人、槙野だけが90分間のプレーを全うしていた。汗で