研究者が専門分野において、重大かつ深刻な間違いに気づいたときには、それを指摘することは重要であるが、学会にその機能はないと前回の本欄で述べた。 では個人の対応として何ができるか、筆者は11月に2つの事例について論説を出版したので紹介する。 1つは東海公衆衛生学会誌での論説1)で、小島勢二名古屋大学名誉教授の著作「検証・コロナワクチン」にある超過死亡2)についての主張の誤りを指摘した。超過死亡は、「例年に比べてどのくらい余分に死亡が観察されたか」という概念を表しているが、「例年」の定義や「余分」が数なのか年齢を考慮した率なのかが統一されておらず、議論がかみ合わない。年齢の影響を排除して行う超過死亡の議論であれば、指標としては「平均寿命」を使うべきで、「例年」の考え方に合わせて、直接比較すればよいものだ。小島名誉教授の著作で「戦後最大の超過死亡が観察された」とした2021年は、2019年以前の