1966(昭和41)年、中山競馬場での寺山。「俺に逢いたいと思ったら、家へ訪ねてくるよりも日曜日の競馬場のほうが確実だよ」と語るほど、足しげく競馬場に通ったという。 というと、一枚のはがきを取り出した。 「三か月前に別れた女から頼りがきたんだよ。突然、オレから去っていったので、てっきりフラれたと思ってたら故郷に帰ってたらしい」 それで縁起のいいところで三か月ぶりに出てきた馬に祝儀をはずむ、というわけである。(原文ママ) これは、寺山修司が1970(昭和45)年秋から'83年春まで「報知新聞」に連載していた予想コラム「みどころ」「風の吹くまゝ」の、'73年3月3日付の書き出しである(『競馬場で逢おう』寺山修司・著/JICC出版局より)。 スシ屋の政、トルコの桃ちゃん、バーテンの万田、フルさん……といった個性的な登場人物が世間話や競馬談義をしながら翌日の馬券を予想する。こうしたスタイルの競馬コ