この最高裁判決の結論自体は確立されていて,恐らく将来も決して動かないでしょうが, 「この判例が前提とした事実」や,「この判例が特に言及しない事情」について考えるのは,社会全体にとり,非常に重要なことであると思います。 1.まず,この判例については,「この患者は自らの確信的な信条に基づいて考え抜いた決定をしているから,その選択を否定できない」という判断であると理解されることが一般的であると思います。そしてその判断は確かに正しいです。 しかし,同時に,法的判断を離れた「現実状況」を考えると,すべてのエホバの証人信者による輸血拒否事例にこれが当てはまるかどうかは疑問です。そして,このことを感覚的に理解するには,最高裁がこうした判断に至った「このケースの具体的事情」を理解することはとても重要であると考えます。 ①この判例の輸血拒否患者は,公開されている情報(最判平成12年2月29日民集第54巻2号