奈良教育大学紀要 第35巻 第1号(人文・社会)昭和61年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.35, No.1 (cult. & soc.), 1986 朝鮮民話集『ネギをうえた人』と金素雲 -国際理解教育における教材開発- 田 測 五十生 (奈良教育大学社会科教育教室) (昭和61年4月24日受理) Iはじめに 強者に学び、他は無関心をおし通す、これが「脱亜入欧」以来のわが国の文化受容の伝統であ った。それは、童話や民話の翻訳・出版においても当てはまる。遠い北欧の「アンデルセン童 話」は熟知していても、アジアの童話や民話について無関心なのが、われわれの一般的傾向なの である。児童・生徒にアジアへの暖かい認識を得させようとすれば、このような傾向に意図的に 対応していく必要がある。就中、隣国である韓国・朝鮮との間には「相互いに憎み合い、その憎 悪の百分の-も貢に相手