えも言われぬ魅力を湛えた、この物語の主人公は、スティーブン・ブラッドレー。東洋の文化にも日本人以上に造詣が深く、しかも優雅な独身。BBC(英国放送協会)の東京特派員だが、実は英国秘密情報部の気鋭のインテリジェント・オフィサーでもある。 ブラッドレーとアメリカ人の盟友マイケル・コリンズのコンビが、精巧な北朝鮮製の偽ドル札を追い詰め、国際政治の闇を衝いた『ウルトラ・ダラー』(新潮社)は、大ベストセラーとなった。 前作の姉妹篇に当たるのが最新作『スギハラ・ダラー』。今回もスティーブンとマイケルの名コンビが奇略縦横の活躍を見せ、「インテリジェンスのわざとは何か」を存分に見せてくれる。 今回の作品のテーマは、現代社会を動かすマネー。その淵源は、第2次世界大戦の際、杉原千畝が外務省の訓令に抗して発給した「命のビザ」で救われた或る「スギハラ・サバイバル」の物語から始まる。彼がアメリカに逃れて、創りだした