湖に棲む魚たちは、這い回る四つ足のぬめぬめした連中を、全く下の下の生き物と考えている。泳ぎが下手で鱗もなく、動きは鈍く毒も棘もない。年取った大きな個体はともかく、若い個体なら捕らえて食うのは簡単だ。しかもこのみっともない連中は、見目も悪ければ味も悪い、どうにも歯ごたえも味気もない餌だった。 しかし、ノサップ=タマラだけは別だ。およそ動くものは何でも口に入れる鰻、短気で不機嫌で獰猛な雷魚や、夜毎徘徊し出会うもの全て呑み込む、あのいつも飢えている鯰でさえも、ノサップ=タマラを見れば黙って避ける。 ノサップ=タマラは湖の女王。湖にはノサップ=タマラを邪魔するものはいない。湖は彼女の庭。湖で起きたことで彼女の知らないことはない。 彼女は湖で最も年取った四つ足で、その顎は成体を一呑みにできるほど大きく、外鰓はふさふさと繁り、鰭はなめらかで厚い。同じ年に孵化した兄弟、ノサップ=ティウやノサップ=サムタ