今日もまた電車が止まっている。改札の電光掲示板を見上げて私は小さく舌打ちした。いま私が住む沿線は、職場も学校も都内にある人々が住む郊外のまちを横一直線に貫く、殺人的なラッシュで悪名高い沿線だ。朝、都内へと向けてピストン輸送で大量に送り込まれたサラリーマンや学生が、夕刻になると再びピストン輸送で郊外へ送り返されてくる。その通勤・通学電車が、止まっている。人身事故だとの電光表示に、今となっては乗客の誰一人、眉ひとつ上げずに手元のスマホに目を落とす。たまたま何かの巡り合わせで重なるときは、1日に2度3度「人身事故で」止まることも珍しくない沿線だ。ただ、その日は少し勝手が違った。朝7時前、女子中学生が飛び込んだのだ。 年間3万人の自殺者を出すという現代日本社会。繰り返される自殺の報道に、みんな絶望的に感覚が麻痺している。社畜とかブラックとか、そんなタームに目も耳も慣れて、それにおかしいと声を上げる