不況業種と呼ばれる印刷業界にあって、千代田区に本社を置く日精ピーアールは、2つの付加価値で業績を伸ばしている。1つは環境対応で、「水なし印刷」によって有害廃液をゼロに。もう1つは美術印刷などに使われる超高精細印刷技術である。積極的に改革に取り組む4代目の中村慎一郎社長に聞いた。 水なし印刷で有害廃液をゼロに 印刷に水はつきものである。一般的なオフセット印刷は、水と油(インキ)の反撥を利用して印刷するため、刷版に「湿し水」と呼ばれる水を大量に流し込む。その結果、有害なVOC(揮発性有機化合物)を多く含む廃液が発生する。 「東京都が指定するVOCの3大排出事業者が、塗装業、クリーニング業、印刷業なのです。これから生き残るためには、VOCを出さない印刷屋になるしかないと思いました」と、日精ピーアール社長の中村慎一郎(40歳)は語る。 同社は2015年に創業80年を迎えた老舗企業だ。中村の祖父が創