男は2人分のトーストと目玉焼きに ジュースとコーヒーを添え 妻の笑顔の写真と お腹の大きな妻と男が並んだ写真と 新しい命を迎えるために 心を込めた編み物が供えられた仏前に 線香をあげ 手を合わせた 男は過去を悔やみ 自分を責めていた そして目を閉じては 妻の笑顔を想い出して 孤独な日々を数え 過ごしていた 記憶の中に ただ、そばにいる それだけで楽しくて かけがえのない日々と そこあった‘’しあわせ‘’を想い出していた 男は 亡くなった妻と子に 早く‘’逢いたい‘’と 祈っていた 男の白髪交じりの頭髪が 「あんず」に見えた ベランダには 夜の暗闇を知るからこそ 朝陽を浴びると花開く 朝顔が咲いていた 「時が悲しみを癒してくれる」 というのは 嘘だと 「あんず」は思い 「ふっ」と短くため息をついた 物干しに吊るされた風鈴が 哀しい音色を響かせた