精神障害者を取り巻く社会環境を論じる場合、マスコミ報道の問題点を看過することはできない。最近も民放のワイドショー番組にコメンテーターとして出演した精神科医が、ある未解決の通り魔事件の犯人像を推測する中で「犯人は統合失調症の患者ではないか」という趣旨の発言をするという「事件」が起きた。 外国のメディアにも同様の問題があるようだ。世界精神医学会(WPA)は現在、世界規模で統合失調症に対する差別・偏見除去に向けた取り組みを進めている。精神障害者が絡む事件報道の適正化はその活動の重要な柱のひとつになっている。 元WPA会長でジュネーブ大精神医学科教授のノーマン・サルトリウス氏が日本で行われた座談会で「精神疾患以外の病気の患者が事件を起こしたときに、例えば『肺炎患者、母親を刺す』という見出しになりますか?」と語るのを聞いて、「メディアに対してどのような働きかけを行っていますか」と尋ねたことがある。サ