本エントリは、薄毛に立ち向かうハゲ予備軍のお話である 代々受け継がれる言葉、だなんて大層なものはないのだけれど、母からよく言われた言葉がある。 「ハゲる前に結婚せよ」 なるほど、父方の家系は頭頂部から心もとなくなり、母方の家系は前から攻めてくる。母方の家系のハゲっぷりは豪快で、ぼくの生まれる前に亡くなった祖父は、通称「ハゲジー」と呼ばれていた。ぼくは、未だ祖父の本名を知らない。 この二つの合いの子であるぼくは、言うなれば将来を確約されたハゲ・サラブレッドとも言えよう。そんなぼくを母は心配していたのだ。 「結婚はまだか」「ハゲる前にはよ結婚せんと」 御年91歳、完動品のビンテージ品である昭和一桁生まれの祖母は呟く。しかし、機は熟さず。伊代はまだ16だし、ぼくはまだ29なのだから。 しかし、いよいよ事態は動きつつあった。大学院時代から細くたなびきたる前髪、やうやう薄くなりたる生え際。そんな社会
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