代表監督にはチームコンセプトとともに、モチベーターとしての資質も問われる。指揮官はその能力を本番までの半年間でどう発揮するか。 「政治の話はここではしない。フットボールは友情や喜びを伝えるものだ。少しおかしくなっているような世界で、最も素晴らしいもののひとつに携われていることを誇りに思う」 北朝鮮戦後、アメリカの通信社記者がフランス語で聞いた「国家として政治的緊張関係にある相手との対戦でしたが?」という質問に、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はそう答えた。 素敵な言葉だ。そして地政学の意味を肌で知る65歳の口から発せられると、重みが違う。何度も紹介されていることかもしれないが、彼は現役時代にベレジュ・モスタールやナント、パリ・サンジェルマンで名声を築き、引退後に地元へ戻ってビジネスも軌道に乗っていたころ、戦火で全てを失った。 そして「フットボールしか知らないから」と指導者の道を歩むことを決意