動物園の近くに住む筆者は、そこで動物を眺めるのが好きだ。眺めるたびに思う。「動物は気ままに生きてていいな。私も動物になって、悩みのない生活をしてみたい…」、と。 筆者はただ思うだけだが、『人間をお休みしてヤギになってみた結果』(トーマス・トウェイツ:著、村井理子:訳/新潮社)の著者・トーマスは違う。本書は、トーマスがタイトル通り「ヤギになりたい」という思いを実行する様子と過程が詳細に描かれた、“突き抜けた”1冊だ。この一大プロジェクトは世界に衝撃と爆笑をもたらし、2016年にはイグノーベル賞を受賞した。 ■きっかけは後ろ向きな思いつき トーマスはイギリス・ロンドンに暮らすフリーランスのデザイナー、33歳(当時)。大学院の卒業制作であった「トースター・プロジェクト」(ゼロからトースターを制作するプロジェクト。どれくらいゼロからかというと、原材料の鉄を作るために、鉄鉱石を探すところから始めた)