中国四川省。省都の成都市から車で北へ約1時間走り、都江堰(とこうえん)市に入った。9万人近い死者・行方不明者を出した2008年5月の「四川大地震」。震源地から約50キロの街は今、地震の傷跡も目立たなくなり、新しい建物の建設が進む。 被災者約1万2千人が暮らす仮設住宅団地「勤勉の家」を訪ねた。巨大な門をくぐると、プレハブ住宅が果てしなく続く。 「心理援助工作駅」(心のケアステーション)と看板のかかる部屋があった。学生ボランティアが詰め、子どもらが一緒に宿題をしたり、ゲームで遊んだりしている。 今も地震のショックを引きずる子が少なくない。突然泣きだす、ほかの子を攻撃する…。「時間の経過とともに、重点的なケアが必要な被災者はむしろ増えている」。運営に携わる四川師範大の遊永恒教授は話した。 ◆ 災害後の「心のケア」が日本で注目されたのは、1995年の阪神・淡路大震災からだ。命の危険を伴う体験がト