東日本大震災以後、大手漁船メーカーに小型漁船の受注が急増している。津波で約2万5000隻もの漁船が流出・損壊したからだ。しかし、漁業の衰退などで需要の低迷が顕著だっただけに、一時的な“特需”による生産設備増強には二の足を踏むメーカーもあり、水産庁によると今年度の漁船の復旧は約6000隻にとどまる。短期の国内生産だけでは需要に追いつかないのが現状だ。(板東和正) 「小型漁船をもう50隻ほど受注してもらえないか。急いでほしい」。10月下旬、小型漁船で国内2位のヤンマー舶用システム(兵庫県伊丹市)の岩手県大船渡市の営業所に、地元の漁業協同組合の職員が訪れ、頭を下げた。 同県沿岸などで天然アワビが収穫できる時期に入る中、漁船が足りないことに焦る漁業関係者は多く、震災後、直接メーカーに足を運ぶことも。工場では社員が土日も作業に取り組んでいるが、「全ての受注に応えられる状況ではなく、やりきれない」と同