■再開の温泉宿「全国に恩返し」 死者13人、行方不明者10人を出した岩手・宮城内陸地震から10カ月。被災地では雪解けとともに復旧が急ピッチで進み、栗駒山麓(さんろく)の温泉宿は一部で営業を再開、地震前の生活を取り戻す人々が増え始めた。一方、がけ崩れの恐れなどから両県でいまだに約 300人が避難生活を続け、復旧工事のため自宅の移転を強いられる被災者もいる。地震後初めての春。それぞれの“日常”をファインダー越しにのぞいた。(渡部一実) ブロロロロ…。14日夕、宮城県栗原市栗駒岩ケ崎の仮設住宅。軽トラックのエンジン音を響かせ、同市栗駒耕英の農業、及川達夫さん(80)が戻ってきた。「おかえりや」。狭い玄関で妻、エイコさん(80)が迎える。 6畳2間のプレハブは、山の自宅に比べれば「おもちゃ箱みたいなもの」(及川さん)。どちらともなく、ため息が漏れる。「平地に来てから体が動かんくなった」「畑仕事がな