酵素触媒重合−新しい高分子合成手法 京都大学大学院工学研究科 小林四郎 生体内での化学反応による物質生産はすべて酵素の触媒作用により行われる。 核酸 DNA, RNA) タンパク質、 ( 、 多糖などの巨大分子も酵素触媒の産物である。 これら生体内触媒反応の特徴は、通常の化学触媒(酸、塩基、有機金属、遷移 金属等の触媒)にくらべて、次のような特性をもつ。穏和な条件下、通常室温 付近、常圧、中性 pH 領域、水溶媒中、高い触媒活性(大きな触媒回転数)で進 行する。しかもこれらの反応では多くの反応因子(基質、位置、官能基、立体 化学、空間など)が精密に制御され、生成巨大分子の分子量、分子量分布、モ ノマーの配列、そして巨大分子の高次構造も規制される。 生物のつくった酵素を単離して触媒として用いる研究、あるいは動物そのも のの代謝生成物を利用する研究は有機合成化学分野では古くから知られている